Friday No.12(16) そこでかかっていたOASISの「Whatever」がすんごく心地良く聞こえた。

 「櫛野展正のアウトサイド・ジャパン展〜ヤンキー人類学から老人芸術まで〜」でライブペインティングを行なっていた画家・辻修平さんの活動拠点である「あさくら画廊」6/4(火)に行った。 

あさくら画廊ホームページ

ʕ•̫͡•ʔ{ライブペイント中の姿はみていない。前にモヤモヤさまぁ〜ずに出ていて見たことはあった)

✳︎

 竹ノ塚駅ほぼ前の中華系羊肉専門店「羊記」で羊肉を堪能した後に歩いて向かう。一本、道を入るとなんとなくディープな感じ。さらに進んだ住宅街は静かで高い建物がないので空気が抜けていて、なんだか一瞬にして誰もいなくなってしまった町のように感じられた。あさくら画廊は民家を住人である画家が住居兼アトリエ兼作品としている二階建ての塊(6000万円で販売されている)。周りにあるだいたい同じ構造の10件弱の家と、まるでキノコの「しめじ」のように密集している。その中に突然変異した毒キノコのようにピンクの館がある。それがあさくら画廊。唐突ではあるが、静寂を漂わせている。創作のエネルギーが具現化させたような異空間が日常に存在する。

 あさくら画廊のオーナーと言っていいのか住人の辻さんは、なにかを悟っているかのような、ある種僧侶的なオーラがある。初対面のぼくらにとても優しかった。
 ʕ•̫͡•ʔ{髪が短かったし、下駄だったからよりそう感じた)

辻修平
東京芸術大学に3浪の末に失敗したことがきっかけで、2000年より豆腐屋の跡地を借りて「仙石画廊」を始め、店内で独自の絵を描き始める。2013年夏、祖母の家が空き家になったことを機に、みずから改装し「あさくら画廊」と名づけた。館内外はすべてショッキングピンクで統一され、滑り台や多数のオブジェを制作し、家1軒が丸ごと作品になっている。(引用:アウトサイド・ジャパン 日本のアウトサイダー・アート 櫛野展正)

 一階(トイレ、お風呂場。両者ともに絵や立体と一体化していたが現役)・二階・ベランダ・屋根全てがほぼピンクに塗られて、作品に覆われている。唯一、一階の小さなキッチンには生活感がある。益若つばささんと草間彌生さんの大きな絵が印象的だった。画面全体、特に目に吸い込まれてしまうような緊迫感があった。

 ✳︎

  あさくら画廊で一体なにがあったのか正確なところはよく覚えていない。玄関から入って一階をみて、ワイルドな階段を登って二階をみて、ベランダに出て、屋根をみて、一階に戻ってまたみて、玄関から出た、のは確かだ。そこは空気・磁場・重力・時間の流れが明らかに現実から引き剥がされている。全てが作品なので安定な内部を慎重に移動するのは頭脳・心理戦のSASUKEをしているようだった。入ったときは単純に暑かったのもあるけど、体が拒否反応もしくは慣れるためかダラダラと汗が流れた。外に出てもなんとなくリアリティがなく、帰りの電車では疲労のため爆睡してしまった。
 今日もあのピンクの館のなかでは辻さんが朝から静かにひとり絵を描いている、と思うとぼくは脊髄をキュッと絞られる。休館日の水曜日も買い出しに行くなど絵を描くための準備に当てられるんだと思う。絵なんか描かなくてもいいんだけども、それでも描かなくちゃいけなくなったとき、誰しも画家なのである。 


 p.s...

最寄り駅に戻ってから入った(行きつけ?)イタリアンバル。そこでかかっていたOASISの「Whatever」がすんごく心地良く聞こえた。 


 『今日』にトマッテくださり、
ありがとうございます。

またね。
天貫 勇
Friday No.12(16)